文化のみちを彩る若女将たち

か茂免」の若女将 船橋まゆみさん

私がか茂免に嫁いで4年になります。
「料亭の若女将」という立場を通じて、白壁の地でお客様をお迎えすることができる喜びを日々感じ、また誇らしく、とても嬉しく思います。
この界隈にはもともと尾張藩の頃は徳川家に仕えた中級武士が住まい、明治以降は豊田家・森村家・盛田家など名古屋財界を牽引した方々が住まわれました。
当店の土地屋敷は、大正初期に洋紙業で成功された中井巳次郎氏の名古屋別邸で、戦時中は師団長の官舎として提供されていました。戦争でも焼けず、進駐軍にも没収されず、この建築財産を残すことができたのは先代からの努力の賜物だと感謝しています。
白壁の街並みも他には真似のできない「か茂免」の自慢のひとつです。「まるでタイムトリップしたような気分」とお客様に感激される街並み。
ときにはお客様に「文化のみち」のマップをお配りし、お食事後の散策もお薦めしています。

いくつかの貴重な建築遺産がすでに商業ビルやマンションになってしまったと聞いています。現存する屋敷や洋館、町並みをこの地域に住む私たちが守っていくのが使命だと思います。

料亭は敷居が高いとおっしゃる方もいますが、この文化財産を後世に伝えていくためにも、是非皆様にご来店頂きたいです。
時代のニーズに合わせて進化しながら、守るべき文化財は守っていける。そんな「文化のみち」地区を名古屋の文化と歴史を象徴する地域の1つに育て、保存して頂きたいと思います。私ども料亭か茂免はその一環として今年度中に文化財登録を目指しております。

香楽」の若女将 伊藤善子さん

東区主税町。
主税町~ちからまち~ と読める方は、かなりの名古屋通。 或いは忠臣蔵のファンでしょう(笑)

私の生まれ育ったこの主税町は、江戸時代の中級武士のお屋敷町。 「香楽」は、当時の馬廻り役 田辺源五左衛門さんの武家屋敷跡です。今は「白壁エリア」として知られている、子供の頃より慣れ親しんだこの街並みや歴史的建造物の数々。 「古くさい」「ダサい」と、当時は幼すぎてその価値はわかりませんでした。

そんな私がアメリカに渡り、歴史の浅い国の人々の、「歴史」や「伝統文化」に対する強い憧れを目の当たりにしました。 また、ヨーロッパなどでは、歴史的建造物が大切に保存され、今でも人々が住み実際に生活されている様子からは、不便さの中にも私達は歴史や文化を守っている、そんな誇りを感じてまいりました。 こうして外から見つめることで、日本の歴史や文化の素晴らしさ、そしてこの町の魅力を新たに発見することができました。

「文化のみち」には、重要建築物の建ち並ぶ歴史ある街並み、 趣ある白壁や黒塀、武家屋敷の跡、大正ロマン漂う邸宅など、名古屋の歴史が、いっぱいつまっています。中級武士のお屋敷町だった江戸時代から近代産業の礎を築いた明治時代、中部財界を牽引された方々のお屋敷が立ち並んだ大正時代。 そして昭和の太平洋戦争では戦火を逃れ戦後の復興と、激動の名古屋の歴史そして文化を、これだけ感じることができるのは、この「文化のみち」エリアの誇るべき特徴です。

現存する建物、この素晴らしい街並みを守っていくことはもちろん、何十年たってもこの街並みがかわらずに、皆様の憩いの道として残していくこと。そのためには、私は「料亭の若女将」という仕事を通じ、少しでも名古屋の魅力、「文化のみち」の魅力を発信していけたらと、 そして代々受け継がれてきた日本文化の魅力を、少しでもお伝えできたらと思っております。

文化は暮らしをゆたかにしてくれます。 そして、ゆたかな暮らしは、さらに文化を継承し発展させていきます。

なにかと厳しい環境の時代ではありますが、失ってしまった歴史は新たには刻めません。

どうぞ、この街並みを、歴史を、「文化のみち」、をずっとずっと後世まで残していけますように…・心より願っております。

「か茂免」の若女将 船橋まゆみさん